2008-01-01から1年間の記事一覧

"Masumiyet Müzesi"を読む(3)

現在、158ページ。 本作品は、ノーベル賞受賞後にはじめて発表された長編小説であり、世界中の読者から待望された新作になるわけだが、ひょっとしてこれは“失敗作”に当たるのではないか、という危惧を抱きつつ読み進めている。 あくまでここまでの印象だが、…

"Masumiyet Müzesi"を読む(2)

只今、84ページ。 “恋愛小説“と名乗るには、あまりに不思議な恋愛小説である。パムックの技巧にかかると、ロマンティズムの片鱗もない恋愛小説(ロマンス)が出来上がるようだ。 男女の出会い(再会)から急速な恋愛に進展、泥沼化、やがて訪れる破局(悲劇…

"Masumiyet Müzesi"を読む(1)

現在、47ページ。 それが自分の人生でもっとも幸福な瞬間だったとは、気づいていなかった。気づいていたら、この幸せを守れたし、すべてがまったく違った方向へ進んだのだろうか?そう、それが人生で一番しあわせな瞬間だと分かっていたなら、決してその幸福…

新着本[Masumiyet Müzesi]

7年がかりで書き上げたというオルハン・パムックの新作、“恋愛小説”[Masumiyet Müzesi]がとうとう発売された。発売日の前日にあたる8月28日にはすでに店頭に陳列されていたので、早速購入。 実務翻訳の方は、ようやく夏の繁忙期も一段落したが、個人的な要件…

京都精華大学オルハン・パムック講演会より(3)

Bu da, her gün almam gereken ilacın nitelikleri konusunda biraz daha bilgi veriyor. İlacın kuvvetinden, hem hayattan hem de hayal gücünden çok beslenmiş olması gerektiğini anlıyoruz. このことから、毎日飲む必要がある薬の性質について、さらに…

京都精華大学オルハン・パムック講演会より(2)

Önce ilaç iyi olmalı. İyilikten hakikiliği ve kuvveti anlıyorum. İnanabildiğim sıkı, yoğun, derin bir roman parçası beni her şeyden daha çok mutlu eder ve hayata bağlar. まず、薬は良いものでなければなりません。「良い」というのは真正で力強…

京都精華大学オルハン・パムック講演会より(1)

すでに1ヶ月が経ってしまったが、先月19日に京都精華大学内で開催されたオルハン・パムック講演会*1のテープを聴く機会があった。 内容は、『父のトランク』に収録された、『内包された作者*2』と題する、2006年にオクラホマ大学で行われた講演を採録した文…

赤と黒―楽観主義と悲観主義

(今回の投稿は、いつも以上に歯に衣着せぬ辛辣なものになっています。ご気分を害されたくなければ今のうちにご遠慮ください) ここ一、二日の『赤と黒』新訳をめぐる白熱した誤訳論争も、ようやく沈静化したようだ。いつか文芸翻訳者の末席に着けることを願…

『奴隷商人―チューリップ時代に咲いたひとつの愛の物語』を読む(3)

奴隷商人ムフスィン・チェレビの物語 ムフスィン・チェレビは、枕元から取り出した貴石細工の手鏡に映る、インドの細密画に描かれている王子にも似た自分の顔に見入っていた。 一七三〇年七月の、とある夜半のことであった。銀の燭台の上では、三本の蜜蝋が…

『奴隷商人―チューリップ時代に咲いたひとつの愛の物語』を読む(2)

■レシャット・エクレム・コチュ(Reşad Ekrem Koçu) 1905年、イスタンブール生まれ。父エクレム・レシャット・ベイ(1877-1933)は、イスタンブールを拠点とする「Tarih(歴史)」「Malûmat(情報)」「Ceride-i Havadis*1」の各新聞社で働いた後、コンヤ工業学校…

『奴隷商人―チューリップ時代に咲いたひとつの愛の物語』を読む(1)

オルハン・パムックも『イスタンブール』で一章を割いた、歴史研究家・蒐集家にして歴史小説家レシャット(レシャッド)・エクレム・コチュ。彼の作品を一度読んでみたいと思っていたのだが、今日の今日まで後回しになっていた。 とりあえず、現在翻訳中の歴…

Cucumis「暗黙のルール」違反を犯す

Cucumisからもそろそろ足を洗い、翻訳作業に本腰を入れねばならない頃なのだが、深く考えもせず突っ込んだ片足を抜くに抜けないでいる。(Cucumisネタは、今度こそ最後にしたい) 前回のエントリーでCucumisの審査のシステムについて触れたが、どうやら私は…

Cucumisに飽きる

とかく飽きっぽい人間ではあるが、なんともはやCucumisにも早々に飽きようとしている。 何であれ使ううちにその欠点や、自分にとっての有用性がはっきりと見えてくるものだが、2週間参加してみて、「なんだか面白くない」と感じはじめた。整理してみるに、以…

Cucumisに嵌る

「只今、鋭意翻訳中」のはずの歴史小説が捗々しくない。このところ一向に集中できないのだ。 毎日、当て所もなくネットサーフィンを続けた挙句、暇つぶしに、と久々に覗いてみた無料オンライン翻訳サイト「Cucumis」http://www.cucumis.org/translation_6_w/…

トルコ語「ひとこと翻訳」受け付けます

検索サイトを通じて拙ブログを訪問してくださる方のうち、「トルコ語 ○☆×□」というキーワードで、要するに辞書機能、自動翻訳機能を探して来られる方が少なくない。 日本語のある単語をトルコ語に置き換えるとなんという言葉になるのか、あるいはその逆で、…

日本語-トルコ語オンライン辞書の精度は、いかほど?(2)

前回に続き、ごくごく単純な単語ばかり選んで比較してみることにする。 せっかくだから、この1週間に拙ブログを訪問してくださった方々が用いられた検索キーワードの中から、「愛」「犬」「兵士」の3つを選ぶことにした。 同じく、上段が「みんなで創る辞書…

日本語-トルコ語オンライン辞書の精度は、いかほど?(1)

「ひとこと翻訳します」宣言から約1週間。この間にも、「トルコ語+自動翻訳」「トルコ語 翻訳」「トルコ語 ☆○※□」といったキーワード検索の結果、このブログに辿り着いた方が何人もいらっしゃるのだが、やはり、質問の書き込みをされる方はまだ現れない。ヒ…

重訳はどこまで原文を伝えうるか?(2)

早速、本題に入ろう。 いずれも、上段がフランス語→トルコ語→日本語の重訳、下段がフランス語から日本語へ直に翻訳したものである。 トルコ語から和訳するにあたっては、トルコ語の原文を逸脱しない訳語、表現を心がけ、最低限の補足を行う以外には、無用な…

重訳はどこまで原文を伝えうるか?(1)

作品選びの過程で、一時ヒッタイトを舞台とした作品(ドイツ語原著のトルコ語訳)の下訳に取り掛かったことを書いた。時代は、かの有名なカデシュの戦いの20年後、紀元前1265年。ヒッタイト大王ハットゥシリ3世の治世である。 歴史小説を訳すにあたり、自分…

翻訳企画書持込みを目指して(1)〜作品を選ぶ

昨年末、翻訳仕事に関し、今年度の目標を立てた。 実務翻訳はさておき、文芸翻訳の分野では、出版社へ翻訳企画を持ち込みたいと思えるような作品を選び、企画書+部分訳(最低でも本文の3分の1)を3ヶ月で仕上げるという、従来の自分の翻訳スピードからいえ…

啓蟄の候

前回の投稿から、すでに1ヶ月以上が経ってしまった。 第一繁忙期?とでもいえる年度末のピークも一段落・・・と見ていいのだろうか。 忙しいのは有難いことこの上ないが、文芸翻訳への頭の切り替え、さらには与えられたテキストというもののないブログへの復…

世紀のトルコ人小説家40人

1月27日(日曜日)付けヒュリイェット紙日曜版を眺めていて、興味深い記事に目が留まった。文芸評論誌『NOTOS ÖYKÜ』が企画した、文芸・文学界で活躍する135人の識者に対して実施された調査の結果、候補となった97人の小説家のうち、“世紀の小説家”として最…

新着本(2)『幸福(仮題)』

■『幸福(仮題)』 〔書 名〕MUTLULUK(仮題:『幸福』)*1 〔著 者〕Zülfü Livaneli(ズルフュ・リヴァネリ) 〔出版社〕Remzi Kitabevi 〔出版年〕2002年 〔頁 数〕343ページ ワン湖の畔にある小さな村で強姦に遭った17歳の娘メリエムは、閉じ込められた暗い土蔵…

新着本(1)『大宰相イブラヒム・パシャ(仮題)』

■『大宰相イブラヒム・パシャ(仮題)』 〔書 名〕PARGALI İBRAHİM PAŞA –Kanuni’nin Düşü, Hürrem’in Kabusu (パルガ出*1のイブラヒム・パシャ〜スレイマンの夢/ヒュッレムの悪夢) 〔著 者〕Cahit ÜLKÜ(ジャーヒット・ウルキュ) 〔出版社〕İNKILAP 〔出版年〕…