2007-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『わたしの名は紅』より(9)

『イスタンブール』の既訳(ほんの一部だけだが)を検証した勢いで、『わたしの名は紅』から再び、問題の見つかった箇所を取り上げてみたい。 もし亡きエシニテやスルタンの望まれたようにヨーロッパの名人たちの模倣を始めれば、“優美”さんのような者たちや…

『イスタンブール』より(3)

Amazon「なか見!検索」ページからの引用は前回までで、今回は『イスタンブール』読者の方のサイトからお借りした。 http://f43.aaa.livedoor.jp/~choku/20070709.html#istanbul_orhan_pamuk 町のこの白黒の魂を捉えているので、ル・コルビジエのような東方…

『イスタンブール』より(2)

五十年の後に、(時々イスタンブール以外の場所で暮らしたけれども)またパムクアパートで、母が抱いてこの世界を初めて見せてくれた、最初の写真の一枚が撮られた場所で暮らしていることが、イスタンブールの別の場所にいるもう一人のオルハンという考えと…

『イスタンブール』より(1)

時々、無性にオルハン・パムックの文章に触れたくなることがある。しばらく我慢していたのだが、先日とうとう『イスタンブール―記憶と都市(İstanbul-Hatıralar ve Şehir)』を買ってしまった。 同時に何冊かの本を読み進めながら試訳をしている関係で、もと…

『ハシバミ八』を読む

■メティン・カチャン(Metin Kaçan) 1961年、カイセリ県インジェス郡に生まれ、イスタンブールに育つ。 『ミザー』誌に連載した短編でデビュー。やがて、1995年に『重厚小説(Ağır Roman)』が出版されると、これは脚本化され映画となった。 その後、シンナ…

 新着本(2)『ハシバミ八』

〔書 名〕FINDIK SEKİZ (仮題:『ハシバミ八』) 〔著 者〕Metin Kaçan (メティン・カチャン) 〔出 版 社〕Can Yayınları 〔出 版 年〕Yapı Kredi Yayınları、初版1997年 (2003年ジャン出版移籍/最新版第5刷) 〔頁 数〕125ページ ―象徴的・寓話的感触のな…

『危険な芝居』を読む

■オウズ・アタイ(Oğuz Atay) 1934年、イネボル生まれ。 1951年にアンカラのマーリフ・コレジを、1957年にはイスタンブール工科大学建築学部を卒業する。その3年後、イスタンブール国立エンジニア・建築家アカデミーで建築科の教官となり、1975年には助教授…

 新着本(1)『危険な芝居』

『キラーゼ』のシノプシス作成も中断したままだというのに、早くも歴史小説に飽きてしまったようだ。飽きっぽい自分のこと、そのうち「歴史小説熱」も再燃することだろうから、ここは今の気分に素直に従って「純文学系」に戻り、先日届いた二冊の現代小説を…