レシャット・エクレム・コチュ

『奴隷商人―チューリップ時代に咲いたひとつの愛の物語』を読む(3)

奴隷商人ムフスィン・チェレビの物語 ムフスィン・チェレビは、枕元から取り出した貴石細工の手鏡に映る、インドの細密画に描かれている王子にも似た自分の顔に見入っていた。 一七三〇年七月の、とある夜半のことであった。銀の燭台の上では、三本の蜜蝋が…

『奴隷商人―チューリップ時代に咲いたひとつの愛の物語』を読む(2)

■レシャット・エクレム・コチュ(Reşad Ekrem Koçu) 1905年、イスタンブール生まれ。父エクレム・レシャット・ベイ(1877-1933)は、イスタンブールを拠点とする「Tarih(歴史)」「Malûmat(情報)」「Ceride-i Havadis*1」の各新聞社で働いた後、コンヤ工業学校…

『奴隷商人―チューリップ時代に咲いたひとつの愛の物語』を読む(1)

オルハン・パムックも『イスタンブール』で一章を割いた、歴史研究家・蒐集家にして歴史小説家レシャット(レシャッド)・エクレム・コチュ。彼の作品を一度読んでみたいと思っていたのだが、今日の今日まで後回しになっていた。 とりあえず、現在翻訳中の歴…