『ロバの図書館』を読む(1)

EŞEKLİ KÜTÜPHANE




 今年の初めに購入したものだが、Türküといわれる民謡が何箇所も登場するため、訳出を諦めてしまった作品である。
 1999年に亡くなったバイクルトが、病床で最期まで校正を続けた遺作。


 カッパドキア地方の小都市ウルギュップで、「ロバの図書館屋」と呼ばれた実在の人物ムスタファ・ギュゼルギョズの物語を中心として、三つの物語がひとつに織り上げられた作品。




〔書  名〕EŞEKLİ KÜTÜPHANECİ (仮題:『ロバの図書館』)
      ―FAKİR BAYKURT KİTAPLIGI(ファキル・バイクルト選集) ⑥―

〔著  者〕Fakir Baykurt (ファキル・バイクルト)

〔出 版 社〕Literatür

〔出 版 年〕初版2000年 (2007年リテラテュル出版より第1刷)

〔頁  数〕147ページ


〔あらすじ〕

 ある暑い夏の日、ギリシャはラリサの町から、ディミトリス・カツィカスという名の青年が“妖精の煙突“の町にやってきた。この青年は、何十年も前、この土地からの移住を強いられた祖父母の足跡を追い、二度とこの地に戻ることのない家族の代わりに、美しいこの土地を見て回りたいと思ったのだった。


 偶然によってディミトリスは、土地の有名人、“お父さん(ババ)”という愛称で呼ばれるアズィズ・ギュゼルギョズと知り合いになる。同年代にあるふたりの青年は、あっというまに打ち解け、ディミトリスはギュゼルギョズ家の客人として迎えられる。そして、驚くべき人物を知ることになる。それはアズィズの父ムスタファ・ギュゼルギョズ、別名“ロバの図書館屋”であった。


 ウルギュップの図書館を管理する一方で、図書をロバの背に乗せて、30以上の村々を巡回しては本を貸し出ししていたためにつけられたあだ名である。村を出ることのできない人々に、とりわけ女性たちにもっと本を読んでもらおうと、ムスタファ・ギュゼルギョズは骨身を削っているのだった。


 ディミトリスと“ロバの図書館屋“の間にいつしか生まれた友愛は、近郊をともに回るうち、しっかりと堅固なものへと変わっていく。やがて、血兄弟の契りを交わしたディミトリスとアズィズの頭に、ウルギュップとラリサを姉妹都市にする構想が浮かぶ。しかし、この仕事がそれほど簡単なものになるわけがなかった・・・・。


 (裏表紙より)