新着本(1) 『デヴシルメ―イェニチェリになった二人のキリスト教徒』

Devşirme



先日届いた二冊から、まず一冊目。


〔書 名〕DEVŞİRME―KOCA SOLAK*1
     (仮題:『デヴシルメ *2 ―イェニチェリになった二人のキリスト教徒』)
〔著  者〕Ertunç Barın(エルトゥンチ・バルン)
〔出 版 社〕Bilge Kültür Sanat
〔出 版 年〕2006年
〔頁  数〕317ページ
〔ジャンル〕歴史小説


 同じ頃、同じセルビア人の小さな村から徴用されたふたりのデヴシルメの物語。
 始まりはイスタンブール。やがて異なる軌跡を辿るふたつの人生。
 ぞっとすると同時に、深く考えさせられるその結末。
 (裏表紙の紹介文より)

*1:solak(ソラック)とは、一般に「左利き」のこと。オスマン帝国時代には、イェニチェリ(スルタン直属の常備歩兵)軍団の60、61、62、63番中隊に与えられた呼び名である。このソラックたちの司令官にあたる四人のsolakbaşı(ソラックバシュ、中隊長)はスルタンの乗る馬を警護する任にあたっており、そのうち右側の二人が、スルタンの方を振り向くことなく的を射ることができるよう弓矢を左手に持つことから、「左利き」と総称されるようになった。イェニチェリの中でも特に身長が高く、勇敢で強靭で弓矢に秀で、従順で話し方もきちんとした者が選ばれたという。

*2:デヴシルメとは、オスマン帝国において、帝国領内のヨーロッパ地域、特にバルカン半島キリスト教地域から若く有能な若者を集め、ムスリムに改宗させた後、密度の高い英才教育、特殊訓練を施すことによって、上級軍人や管理職者に育て上げ、帝国の上層階級を構築するための徴兵・徴用システムである。また、このシステムによって召集された若者たちのことをも言う。若者の徴用にあたっては、目を特別引くことがないよう金髪は避け、肌の浅黒く黒い髪の若者が選ばれたほか、一家の跡継ぎとなる唯一の男子を奪うことのないよう、複数の男子をもつ家庭から選ばれるのが決まりだった。ある土地が帝国によって新たに征服されると、その地域に居住する外国人・異教家庭の若者の5分の1が徴用される。やがて若者たちは各人の能力に応じ、身体能力に秀でていればイェニチェリに、管理能力や事務処理能力に優れていれば宮廷官吏に配属された。イェニチェリ軍団やボスタンジュ(警護兵)軍団の基盤はデヴシルメ制によって支えられていた。また歴史的に見ても、有能な長官たちや大臣たちの大半はデヴシルメのなかから輩出している。